ITパスポート試験とは?
日本の情報処理技術者試験の一つで、情報技術(IT)に関する基礎的な知識を問う試験です。経済産業省が実施しており、ITの知識が必要とされる職業に従事する人や、これからITに関する仕事に就こうとする人を対象としていますが、最近では病院などで働く医療従事者や学生の資格取得も増えてきています。ITに関する基礎的な知識を評価し、ITリテラシーの向上を図ることを目的としています。IT技術の基本、経営管理や法務、セキュリティなど幅広い分野の知識が求められます。
試験概要
試験内容
大きく分けて「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」の3分野から出題されます。
ストラテジ系:経営戦略、業務プロセス、システム戦略など
マネジメント系:プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査など
テクノロジ系:基本理論、コンピュータシステム、技術要素、開発技術など
出題方式
ITパスポート試験の出題方式はCBT方式です。CBT方式では、コンピュータに問題が表示され、キーボードやマウスを使って解答を入力していく方式をとります。CBT方式は毎月すべての都道府県で実施しており、受験者の都合に応じて試験日時や会場を選択可能です。出題数は小問が100問で、四肢択一式にて出題されます。
合格点と合格率
ITパスポート試験の合格ラインは、総合評価点が600点以上であること、かつストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の各分野でそれぞれ300点以上を獲得することです。全体および分野別の評価は1000点満点で行われるため、総合得点で60%以上、各分野でも30%以上の得点を取得する必要があります。
ITパスポート試験の合格率は50%台です。IPAの統計資料によると、各年度の合格率は以下の通りです。
2020年度:58.8%
2021年度:52.7%
2022年度:51.6%
情報処理技術者試験 統計資料
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/pdf/statistics/202212_ip_toukei.pdf
IPAが主催する他の情報処理技術者試験には、合格率が10〜20%台のものもあります。しかし、ITパスポート試験はその中でも合格率が高く、IT系の資格を取りたい人やIT初心者が最初に受ける試験として最適と言えるでしょう。
臨床検査技師におすすめな理由
医療現場のIT化
現在、電子カルテの導入が進み、アプリケーションやソフトウェアによる業務の効率化やサービスの充実が図られている一方で、いまだに紙カルテを使用したり、アナログの手法に依存する医療現場も多く存在します。IT化を進めることで、地域や環境に関わらず医療を提供できる可能性が広がります。しかし、医療現場ではIT知識に精通している人は非常に少ないのが現状です。今後、医療業界のIT化がさらに進むことが予想される中、IT知識を備えた医療従事者は非常に重宝されるでしょう。ITパスポートを取得することで、就職が有利になり、より良い条件で就職できる可能性も増えるため、人材としての価値も高まります。
個人情報へのセキュリティ対応
- リスク管理: セキュリティ知識を持つことで、潜在的なセキュリティリスクを特定し、それらに対処するための戦略を立てることができます。これには、データ侵害や不正アクセスなどのリスクを定量化し、優先順位付けを行うことが含まれます。
- ポリシーの遵守: 医療データは法的要件や業界規制に従う必要があります。セキュリティ知識を持つことで、適切なポリシーや規制を理解し、それらに準拠するための措置を講じることができます。
- トレーニングと教育: セキュリティ意識の向上は、全ての従業員にとって重要です。臨床検査技師がセキュリティ知識を持つことで、同僚や他の関係者に対してトレーニングや教育を行うことができ、組織全体のセキュリティ意識を高めることができます。外注システムや検査システムの他に、患者情報を取り込む検査装置など様々なバリエーションがありますので、院内のセキュリティ管理の模範となります。
- インシデント対応: インシデントが発生した際、迅速かつ適切に対応することが重要です。セキュリティ知識を持つことで、インシデントの検知、通知、分析、対応などを効果的に行うことができます。
- 技術的対策の実装: セキュリティ知識を持つことで、技術的なセキュリティ対策を実装し、システムやネットワークの脆弱性を低減することができます。これには、アンチウイルスソフトウェアやファイアウォールの導入、アクセス制御の強化、暗号化の実装などが含まれます。さらに、システム会社などとのコミュニケーションにおいても、セキュリティ関連の知識があることで話がスムーズに進みます。また、他の施設へのデータ送信時には暗号化やハッシュ化技術を用いることで、より安全な通信が可能となります。
電子カルテや医療機器メーカー、ベンダーとの円滑なやり取りが可能に
ITパスポートの知識は、電子カルテや医療機器メーカー、ソフトウェアベンダーとのやり取りにも役立ちます。ITの基本概念を理解していることで、技術的な要件や仕様の確認がスムーズに行えるようになり、導入プロジェクトやトラブルシューティングの際に迅速かつ的確な対応が可能となります。例えば、新しい電子カルテシステムの導入時に、要件定義やカスタマイズの際に技術担当者と専門的なコミュニケーションを取ることができるため、システム導入が円滑に進みます。
学会発表の演題に繋がる
IT知識は、学会発表の演題としても活用できます。例えば、電子カルテの導入による業務改善の効果や、情報セキュリティ対策の事例、IT化による医療サービスの向上など、ITを活用した取り組みやその成果をテーマにした発表が可能です。これにより、自身の研究成果を発表し、医療現場でのIT活用の重要性を広く訴求することができます。また、ITに関する最新のトピックを追うことで、自身の知識をアップデートし続けることができます。
合格に向けた準備
過去問の利用
試験の傾向に慣れたい場合は、無料で公開されている過去問を活用して感覚を身につけることが効果的です。試験の問題には一定のパターンがあり、出題内容は大きく変動しません。最新の過去問から順に解いていくと、間違った問題の解説を理解することが大きな得点につながります。また、試験時間内に解く練習も重要であり、本番のシミュレーションとしても効果的です。
合格に向けた勉強時間
すでにIT部門で働いた経験がある人や、大学・専門学校で情報系の科目を履修していた人であれば、60~100時間程度の勉強でも十分に合格ラインに達することができます。一方で、大学生やIT知識が全くない人の場合には、約180時間の勉強時間が必要と言われています。180時間の場合、週に10時間の勉強(平日に1日1時間、週末に5時間)で4ヶ月かかり、週に15時間勉強できれば3ヶ月かかる計算となります。
その他の関連資格
「情報セキュリティマネジメント試験」と「医療情報技師試験」などがあります。
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験は、情報セキュリティに関する専門知識やスキルを評価するための資格試験です。この試験は、情報セキュリティに関する基本的な理解や実践的な能力を持つ個人を認定することを目的としています。
医療情報技師試験
医療情報管理の専門家を育成するための資格です。医療情報システムの運用や管理、電子カルテの導入・活用など、医療分野における情報管理に関する幅広い知識が求められます。医療現場においては、患者情報の管理や医療データの保護が重要な課題となっています。医療情報技師試験に合格することで、臨床検査技師としての活動においても、医療情報の適切な管理に貢献することができます。
ITパスポート試験と並行して、情報セキュリティマネジメント試験や医療情報技師試験など、関連する資格取得も検討してみてください。自身のキャリアに合った資格を持つことで、幅広い分野での活躍のチャンスが広がります。ぜひ、これらの資格を目指して、自己成長を図ってみてください!