勉強会や学会発表などで苦手意識を持つ方は、新人に限らず中堅以上の方にも少なくありません。発表が苦手な方の特徴として、プレゼン資料を「何となく」で作成していることが挙げられます。そのため、成功する時と失敗する時の違いが分からず、毎回一か八かの状態に陥ってしまいます。このような状況では、プレゼン資料に自信が持てず、結果として発表自体が苦手になってしまっているのではないでしょうか。
一方で、指導する立場の先輩や上司も、何を教えれば良いかが分からず、「誤字脱字のチェックのみ」を行い、後輩や部下を放置してしまっている場合もあるでしょう。そこで、今回紹介するプレゼン資料の作成手順を自部門などでアレンジしながら活用することで、資料の作成者と指導者が共通認識を持ちながら作業を進めることができます。
作成手順
まずはいきなりパワポ作成を行わないことが重要です。これは様々な著書やネットの記事でも紹介されているため上司や先輩から聞いたことがあるかもしれません。A4用紙や裏紙あるいはPCやスマホのメモ帳やWord等を使用することをおすすめします。
聞き手と目的を明確に
聞き手はどんな人が来るか?(発表者が臨床検査技師の場合)
- 事務職(医事課や総務課など)の参加があり
専門用語に補足を入れる。医療職以外でも共通認識が持てる図やイラストを使用する。 - 臨床検査技師のみ(発表者と別部署)
国家試験の問題や文言を記載する。 - 臨床検査技師のみ(発表者と同部署)
専門的な内容を盛り込む。検体検査部門の場合、試薬名(世代)や装置機種などの詳細も記載すると聞き手の理解に繋がる。 - 医師やその他メディカル職の参加あり
臨床に関係する疾患の内容や具体的な薬剤名。それぞれの職種の学会や論文を参考に伝わりやすい表現で記載する。
目的は聞き手意識となっているか?
- 聞き手の納得を得たい内容は何か、聞き手が発表を聞いた後にどのような行動を取ってもらいたいかを考える。
アウトラインを記載
アウトラインは一般的なものを使用
- 過去の学会や勉強会の報告例や検索して調べたものを参考にする。あまり悩みすぎないことが重要であり、大体のアウトラインの形は世に出回っている。
学会発表の場合の例:背景→目的→対象・方法→結果→考察→結語
アウトラインそれぞれにメッセージを記載
- 例:背景
従来試薬や薬剤の問題点は〜、改良点は〜である。 - 例:目的
改良の効果を、臨床検体を用いて検討する。
この段階ではなるべく沢山の情報を記載しておく。更に具体的な内容があれば細分化する。(類似の事例や症例などもこの段階で調べておく)
記号や図、表、グラフの使用を検討
先程細分化した内容について、図解や表を用いた表現が可能か考える。また、それぞれにタイトルを記載しておく。
PowerPointのスライドに清書
フォントは太字が分かりやすい游ゴシックかメイリオを使用する。
分ける、削る作業
分ける作業
- 1スライド・1メッセージになるようにする。情報を詰め込み過ぎないように注意し、スライドを2枚に分けることも考える。
削る作業
- 色を削る
コンセプトカラーを決め、サブカラーと数種類のグレーだけでスライド構成を考える。 - 図形を削る
正円、四角形、三角形、矢印のみを使用する。 - 線を削る
図形の周囲の線、文字の下に引く線、グラフの罫線等を削る。表は縦線を削ると見やすい。 - 文字を削る
文章が長い時は1言や1文で表現し、箇条書きにまとめる。
揃える作業
文字揃え
- 基本的には左揃えにする。強調したい文字は中央揃えでも良い。
数字揃え
- 表などの文字の場合は基本的には右揃えで桁数が分かるようにする。
図形の位置揃え
- コピーアンドペーストする場合、shiftキーを使用することで位置ズレを無くす。
ルール揃え
- 自身で一貫したルールを定める。例:タイトルは◯pt、メリットは右側、デメリットは左側、アイコンは白黒、フォント、色など。
空ける作業
関係性が強いもの同士は近く、関係性が弱いもの同士は遠く
- 人の目は寄せ集まっているものを無意識にグループとして認識するため、余白に注意する。
適度な余白を持たせる
- タイトル、メッセージ、要素それぞれに適度な余白を持たせることでメリハリをつける。
追加で飾る作業
イラストやアイコン、写真等を追加
- より分かりやすいイメージを追加する。
トリミングや背景色に気を付けながら追加
練習及び推敲の繰り返し
聞き手を意識した自問自答の繰り返し
- スライドに疑問があればそれを補えるような説明に修正し、分かりやすいものに切り替える。
アニメーションの必要性を確認
- 多過ぎないように必要な箇所を検討する。
推敲を繰り返しながら練習
- 台本をある程度用意するだけで、話せるレベルになる。
本番、本番後
振り返り作業
- 質問や聴衆の行動が設定した目的に沿ったものになったか確認する。発表中の聴衆の反応が意図したものであったか確認する。
次回作成時に必要なことを記録
- 足りない部分が何であったかを自己分析し、次回に活かせるようにする。