臨床検査技師のマネジメント論 部下、後輩の育成に活用できるピープルマネジメントとは?

知見

毎日の業務が忙しい中、部下や後輩のマネジメントに悩んでいませんか?私も同じような悩みを抱えていました。しかし、部下や後輩の成長がチーム全体の成果につながることを考えると、この課題を避けるわけにはいきません。ですが、臨床検査技師はこの重要なマネジメントについて学ぶ機会がほとんどありません。マネジメントは管理職の仕事というイメージが一般的ですが、管理職になってから初めて学ぶのでは、組織の発展は難しいでしょう。

この記事では、同じ悩みを抱える臨床技師の皆さんに向けて、実際に病院の管理職を経験した私が学んだマネジメント方法を提案します。

マネジメント通じて職場の雰囲気は大きく改善されます。部下や後輩が自信を持って業務に取り組めるようになると、ミスが減り、職場全体のストレスが軽減されます。これにより、業務がスムーズに進行し、職場の効率が上がります。

さらに、部下や後輩が成功体験を積むことで、次第に自分自身もリーダーシップを発揮するようになります。彼らは新たな部下や後輩の育成に積極的に取り組み、その結果、育成のサイクルが職場内で生まれます。このサイクルは、職場全体の士気を高め、ポジティブな職場文化を形成する要因となります。

現代の若手スタッフの中には、キャリア焦燥感を感じたり、管理職への興味不足を抱える人も少なくありません。このような課題に直面する中、効果的な育成は、彼らの将来への不安を軽減し、キャリアへの関心を高めるのに役立ちます。適切なサポートと指導を受けることで、若手スタッフは自信を持ってキャリアパスを描けるようになり、将来的なリーダーシップへの意欲も増していきます。

ピープルマネジメントとは

ピープルマネジメントは一人ひとりの「成功」にコミットすることで、成果の最大化を目指す方法です。従業員のエンゲージメント(組織に対する愛着)やモチベーションを高めることを重視するのが特徴といえます。

従来のマネジメントとの違い

従来のマネジメントでは「仕事の成果やパフォーマンス」を高めることに重きを置くのに対し、ピープルマネジメントではそれらに加えて「従業員エンゲージメントの向上」も重視するのが特徴です。また、目標達成までの考え方については、従来のマネジメントでは「ヒト・モノ・カネ」の経営資源を適切に管理することで組織の成果の最大化を目指します。

ピープルマネジメントに取り掛かるためには自己効力感を理解する必要があります。

自己効力感とは

自己効力感とは、目標を達成するための能力を自分が持っていると認識することを指します。簡単に言えば、「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思える認知状態のことです。これはスタンフォード大学の心理学者アルバート・バンデューラ博士によって提唱された概念で、英語では「Self-efficacy」と表現されます。

自己肯定感との違い

自己効力感と類似する言葉に「自己肯定感」があります。どちらもビジネスパーソンにとって、仕事のパフォーマンスや人生の満足度を向上させる上で重要な概念です。まずは、似ているようで異なるこの2つの違いをしっかりと押さえておきましょう。

無条件に「自分には価値がある」と認めることができる「感情」のことです。「能力があるから」「容姿が優れているから」などの理由で自身を価値ある存在だと考えるのではなく、ありのままの自分の存在価値を無条件に受け入れている状態を指します。

成功体験

成長体験とは、自分自身の努力や行動によって成功を収めた経験のことです。成功体験を積み重ねることで、「自分はやればできる」という確信が強まります。小さな成功でも積極的に認識し、自己評価を高めることが重要です。

社会的説得

社会的説得とは、周囲からの励ましや肯定的なフィードバックを通じて自己効力感を高めることです。信頼できる人からの応援や評価は、自分に対する自信を持つきっかけになります。逆に、否定的な評価や批判は自己効力感を下げる可能性があるため、ポジティブな言葉をかけてくれる人々との関係を大切にすることが重要です。

代理経験

代理経験とは、他人の成功を観察することによって自分も成功できると感じることです。特に、自分と似た背景や状況の人が成功している様子を見ることで、自分にも同じようにできるという自信が湧いてきます。ロールモデルを見つけ、その人たちの成功ストーリーを学ぶことが効果的です。

モチベーション

モチベーションとは、目標に向かって行動するための内的な意欲やエネルギーのことです。自己効力感を高めるためには、自分が成し遂げたい目標を明確にし、その達成に向けた強い意欲を持つことが重要です。モチベーションを維持するためには、達成可能な小さな目標を設定し、一歩一歩進むことで成功体験を増やすとともに、継続的な自己成長を実感することが大切です。

これらの4つの要素を意識しながら日々の生活や仕事に取り組むことで、自己効力感を高め、自信に満ちた行動ができるようになります。

自己効力感を高める過程では、生存者バイアスにも注意が必要です。生存者バイアスとは、成功した事例や人々ばかりに目を向け、失敗した事例を見落としてしまう傾向のことです。成功している人々のストーリーだけを参考にすると、失敗する可能性やその対処法を見過ごしてしまう恐れがあります。成功だけでなく、失敗からも学び、バランスの取れた視点を持つことが大切です。

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