2024年度の診療報酬改定では、医療DXの推進や感染症対策の推進に関わる項目など多岐にわたる項目が改定されますが、診療報酬改定の中でも特に気になるのは「臨床検査技師など医療関係職種の賃上げ・給与アップ」です。
給料アップのための対策はこれまでにも複数回行われてきましたが、現場の職員からすると「あまり実感がない」という方も多いのではないでしょうか。
今回の診療報酬改定の賃上げ対策のポイントとともに、臨床検査技師の給与はいくらアップするのか、確認してみましょう。
臨床検査技師の平均給与(賃上げ前)
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、臨床検査技師の平均年収は508万円(平均年齢:41.3歳、勤続年数:11.9年)と報告されています。平均月収は35万円、平均賞与(ボーナス)は87万円程です。実際に受け取れる手取り額は一般的に額面の75~80%ほどとなるため、臨床検査技師の手取り年収はおよそ380万~406万円と推定されます。
また、平均月収が40万円を超える人はごく一部で年配層や課長クラスの方が含まれます。特に20万円~30万円の20代、30代は比較的給与が上がりにくく、将来への漠然とした焦燥感や不安感を持つ方が多く居るのが現状です。
臨床検査技師の資格だけでなく、認定資格や2級臨床検査士、それ以外の医療情報、医療経営、セキュリティやIT系の資格を取得する方も増えています。
診療報酬改定による賃上げ
厚生労働省では、2025年度までの2年間にわたり、ベースアップの目標数値を設定しています。詳細は厚生労働省の公式YouTubeでも確認可能です。
〈2024年度〉 ベースアップ+2.5%
〈2025年度〉 ベースアップ+2.0%
引用:厚生労働省の公式YouTube
例えば「2.5%の賃金アップ」は、具体的な給料額でイメージしてみると、ざっくり次のようになるでしょう。
基本給が月35万円の臨床検査技師の場合
月々の給料は
35万円✕2.5%=8,750円アップ
年間では
8,750円✕12ヵ月=105,000円アップ
なお、これはベースアップを全て基本給とした場合です。手当として支給されることもあります。
賃上げのために「ベースアップ評価料」を新設
「臨床検査技師など医療関係職種の賃上げをするため」に以下のような「ベースアップ評価料」の新設と一部診療報酬の引き上げが実施されました。
① 外来・在宅ベースアップ評価料(I)(II):外来または在宅医療を実施している医療機関
② 入院ベースアップ評価料
:入院医療を実施している医療機関
③ 初再診料等や入院基本料等の引上げ
①と②のベースアップ評価料を算定するためには、施設が厚生労働省に賃金アップ計画を作成し、実施状況を報告する必要があります。経営上2.5%の賃上げが難しい場合は最低1.2%の賃上げが行われます。
さいごに
今回、2024年度診療報酬改定の賃上げによる臨床検査技師の給与アップについて紹介しました。現状は基本給では無く、手当での給与支給が多いようです。2024年度診療報酬改定の「医療従事者の賃上げ」の実態調査を報告しているサイト(PT-OT-ST.NET)がありました。診療報酬改定は2年毎に実施され、今回も直近2年間の賃上げについての話です。基本給は法律上下げることは難しいですが、手当は施設独自の判断となるため、確実に現在の給与が保証されるものではありません。そのため、次回2026年度の改定内容にも注目する必要があります。今後も臨床検査技師の給与についての最新情報があれば、取り上げていきます。