【歩く肺炎が急増中!】マイコプラズマ肺炎は新型コロナウイルスとどう違う?

知見

2024年に入り、様々な感染症が再び話題となる中、特に注目を集めているのが「マイコプラズマ肺炎」です。一般的には「歩く肺炎」とも呼ばれ、軽度の症状から始まり、気づかないうちに重症化することがあるため、見逃されがちな病気です。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスといったウイルス性の感染症に注目が集まる一方で、このマイコプラズマ肺炎も、今まさに警戒すべき感染症の一つとなっています。

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌が引き起こす肺炎で、特に小児や若年成人に多く見られます。全国感染者数は、2024年8月9日まで6週連続で増加しています。

データ:国立感染症研究所HPより

日本では、様々な細菌感染症に対してセフェム系の抗菌薬がよく用いられますが、マイコプラズマ肺炎にはセフェム系を含むβ-ラクタム系の抗菌薬の効果がありません。

マイコプラズマに効く抗菌薬は、マクロライド系抗菌薬(エリスロシン、クラリス、クラリシッド、ジスロマックなど)、テトラサイクリン系抗菌薬(ミノマイシンなど)、ニューキノロン系抗菌薬(クラビット、オゼックスなど)に限られます。

引用:奈良医師会 子どものマイコプラズマ肺炎 ―薬が効きにくい―

一方、新型コロナウイルス治療薬には「抗炎症薬」「抗ウイルス薬」「中和抗体薬」があり、このうち重症化リスク因子のある方等の重症化を防ぐ目的で投与され、「軽症」の方を対象に含むのは「抗ウイルス薬」と「中和抗体薬」となっています。

現在、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬には耐性はできていませんが、マクロライド系、リンコマイシン系の抗菌薬に耐性ができています。

厚生労働省の報告によると、薬剤耐性菌の死亡者数は現状のままいくと、がんによる死亡者数を超えて2050年には1,000万人に達すると予想されています。

引用:厚生労働省健康局 厚生労働省における AMRの取組

新型コロナウイルスもデルタ株やオミクロン株等、様々な株の出現がありますが、細菌感染も私たちの生活を脅かす存在です。

マイコプラズマ感染の症状はインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスとは異なり、感染してから2~3週間後に症状が現れます。初期症状としては37〜38度の発熱、倦怠感、頭痛、のどの痛みなどがあり、その後、3〜5日遅れて咳の症状が現れます。他の感染症と違い、鼻水の症状は少なく、痰の絡まない乾いた咳(コンコンという咳)が特徴です。これらの症状が長引くこともあり、適切な治療を受けずに悪化するケースも見られます。

特に、せきはひどいと数週間続くこともあるようです。マイコプラズマに感染しても、すべての人が肺炎を引き起こすわけではなく、肺炎を発症するのは感染者の2〜3割程度といわれています。軽症であれば軽い風邪のような症状で終わることもありますが、基礎疾患がある方は重症化しやすいため、注意が必要です。

多くはかぜ程度の症状で済んでしまうため、マイコプラズマ肺炎とは気づかずに出歩けてしまいます。それで人にうつしてしまうため、“歩く肺炎”とも言われています。

保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖空間や家庭内で感染が広がることがありますが、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くなく、濃厚接触による感染が主と考えられています。普段から流水と石けんを使った手洗いを徹底することが重要です。また、感染した場合は、家族間でもタオルの共用を避けましょう。せきの症状がある場合は、マスクを着用し、“咳エチケット”を守ることを心がけましょう。他にも最近話題の期限切れの血液から作られる「人工赤血球製剤」などの情報を取り上げています。

タイトルとURLをコピーしました